作成者:続・木造機関庫制作記/雲の上から届いた便り
しがないヒマな洋服屋のオジさんが、友人・小林晃の活躍によって、あまりしがなくない身の上になろうとし始めたあたりが前著『木造機関庫制作記』の結末だった。 ほんとうは、つぎには「ヒマなオジさんがいそがしくなるの巻」というタイトルの本を書きたくて、ひそかに構想をねっていた。そして守備よくいけば、そのつぎには「レオナルド・ダビンチの背中が見えた日」なるトドメを書き、以て「機関庫三部作」とするつも りだった。しかし前著の結末に書かれていたことがらは、どれもその時点ではうまくいかず、ドッと白髪がふえた。 だが、強豪小林晃は決してメゲることなく次々と新手を連発し、とうとう渋谷のパルコで、オジさんの個展を開催するところまで事態を進展させることができた。 レオナルド・ダビンチの背中は、いまだ見えぬままだが、それからというもの、この一年は目まぐるしく流動し、わたしの人生にとって大きな転換の年となった。その平成八年最後の日、本日十二月三十一日、本書の執筆をはじめることにする。
登録日:2024/10/31